十一月号
 
○ 勤労と祭りとにひなめ
 
      旧暦では十一月から一月までを冬という。したがって十一月の祭りは本来冬祭りに属する。その最たるものが新嘗祭である。伊勢神宮の神嘗祭に始まる全国神社の秋祭りは、新穀感謝の意味もあるが、その年の初穂を神にささげることで、神の力のさらなる更新をはかるのが本来の目的である。そして新嘗は、「贄(にへ)の忌み」=(神に食事を差し上げるための斎み籠りのこと)を語源とすることからもわかるように、神祭る人が、そのように更新された神に近づき、神と共食することで一体となり、神の力を受けて、新たな生命力を得ることを目的とする。神祭る人とは、国全体でいえば、天皇、地域でいえば各氏神の神主、古代には各氏族の長がその大役を担った。
 だから、本来米作りに代表される生産生活や勤労は、単に肉体を養うためにのみ行われるものでなく、むしろ霊魂のよみがえりをはかるための新嘗の祭りのために行われるというのが本義である。
 たとえ農業生産が少なくなり、工業や商業が産業の主体となろうがこの基本精神は無意識のうちに日本人の勤労観となっている。それは日本人独特の仕事に対する神聖観、あるいは仕事を人間修養の道ととらえる姿勢である。戦後の急速な復興や、高度経済成長を推進した力は意外と古代の祭りと生産の心に源があるといえよう。「勤労感謝の日」という発想にもその片鱗がうかがえるであろう。
 
○十一月の主な祭典行事
  十一月 三日 午前九時
    菊花祭  (赤間神宮献菊会の奉仕により殿内を多数の菊で飾り祭典を執行。菊花の舞奉納。祭典後優秀作品の表彰を行う)
 
  十一月十五日 終日
    七五三詣  (古来先祖の霊を祭る佳日とされ、先祖にあやかって子孫の繁栄を祈るという趣旨に発する)
 
  十一月二十三日 午前十一時
    新嘗祭 (農水産をはじめ諸産業の収穫成果を感謝する大祭古来春の祈年祭とともに最も重要な伝統祭儀。この日赤間神宮神饌田の新米を用いたご飯と白酒、また山口県漁連・山口県経済農協連からは先年御即位大嘗祭に際し、山口県より大嘗宮に献納された数々の特産物も供えられてる) 
 
○十一月のことば
  昭和天皇御製
  新米を 神にささぐる 今日の日に
深くもおもふ 田子のいたづき